−レッツ☆ウォー− 


第二次・おつきさま★戦争(2008.8.2)

 かなり前の話だ。幼稚園生か、小学生の時だったかな。双葉一家とうちの家族で夏祭りに行った時、手を握られて引き摺られるように歩いていると、ふと双葉が空を見上げて言ったのだ。
『―――あ、お月様』
 丸い月が双葉の横の方、屋根の上に乗るようにしてあった。大きな星が雲ひとつない空にぷかんと浮いていて、いつもより綺麗に見えていた。二人でそれを指差して、わけもなくはしゃいだ。
 その後、お囃子が聞こえだして空から目を離した。角を曲がって駆け出して、再び空を見上げた時、双葉がきょとんと目を丸くして俺の袖を引いた。
『……お月様がいない』
 双葉の横手に月はなかった。月は背中の方にあった。そして双葉が言ったのだ。
『いっちゃん! お月様が動いたわっ!』
 ……他にも振り返っては「月が付いてくる」と言ったり、鏡だの水面だのに映った月を見て「月が沢山ある」と言ったり。昔から双葉が言うことには驚かされてきた。だが、今でも驚くことはある。

 最近、双葉がまた妙な持論を展開してきた。月は何故欠けていくのか。その答えを見付けたらしい。
 手にお気に入りの白いうさぎのぬいぐるみを抱いて、双葉は窓辺から空を指差す。目が輝いてる。
「いっちゃん、月はうさぎにかじられて欠けていくんだわ」
 双葉はうさぎが空を飛べると信じている。それが前提でなければこの持論は成り立たない。だが、何があっても現代科学には太刀打ち出来ない持論だろう。
 ……双葉さん。高校生なんだから、うさぎの耳が羽じゃないことに、もう気付いてもいいんじゃないですか?

☆ 本日の試合結果。おつきさま勝利。


-レッツ☆ウォーtop-